愛の楔




ポタポタと拭うこともしないで美空は、涙を流す。俺は、手を伸ばして代わりに拭ってやった。


「心配しなくても神賀はちゃんと奪い返す」

「………っ」

「もう、二度とこんな目にはあわせない」


だから、泣き止んでくれないか。


そう意を込めて、俺は、美空の両頬を包むと、顔を上げさせた。


「龍さ………」

「美空」


そっと美空に顔を寄せて、目の際に唇を寄せた。
止まることのない涙を吸いとるように。


「っ」


驚いた美空は、目を見開く。
そっと美空から僅かに離れてニヤリと笑う。


「涙、止まったな?」

「っ………今っ」

「ん?」


俺がキスした箇所を押さえながら美空の顔が真っ赤に染まる。


「今、今っ………~~っ」


予想を裏切らない美空の初々しい反応に思わず笑みが溢れる。