「!!」
驚きで言葉のでない美空に、俺は、壁を見つめその遠くを見るように目を細める。
「俺の母は、まだ、俺が物心ついたばかりの頃に死んだ」
まだ組長になったばかりだった親父を、他の組の連中が良い機会とばかりに潰しにかかっていた。
そして、一番弱いと思われた母を拐った。親父を含め、組の連中は血眼になりながら行方を探した。
「そして、母が拐われて一週間………やっと捜して親父が乗り込んだときには、既に母は、冷たくなっていた」
血塗れに染まり、周りは血の海。母以外にも倒れており、それらは、母に一番忠誠を誓っていた奴等だった。
母を護るように、同じように冷たくなっていたそうだ。
「その場所が神賀にある」
親父は、母を失い、仲間を失い、絶望し、母の血が染み付いた神賀を敵の組から奪った。
そして、その場所に母の墓を、そして、母の墓を護らせるように死んだ仲間の墓を。
確かに神賀は大切な場所だ。
親父にとっても、組にとっても………俺にとっても。


