「調べます」
炯は、キーボードに手を走らせる。
次から次へと……明日も忙しくなりそうだ。
チラッと時計に目を移すと、11時を回っていた。
美空は、起きただろうか。
「………少し離れる」
一言炯に言ってから俺は部屋を出た。真っ直ぐ私室に戻って、そっと覗けば部屋はもぬけの殻だった。
起きたみたいだな………
それから、桜の間に向かう。
そっと覗けばパソコンに向かっている美空の姿があった。
真剣に、教科書を開きながら勉強しているようだ。
美空が俺に気づくことはない。
………頑張れよ
俺は、心の中でエールを贈ってからそっと襖を閉めた。
気づかなかった。
美空が俺に気づいていたことに。
そして、冷めた目で襖を見つめていたことに。


