気付くと、西の空が少し薄くなりかけていた。
もうすぐ、太陽が沈んでいく。
遠くを眺めるのには慣れていたけど。
太陽が沈んでいく様を眺めるのは初めてだったかもしれない。
アタシがいつもいる場所からは、沈んでいく太陽が見えない。
ところどころで、いろんな人たちの会話が聞こえてくる。
時折の笑い声の中、弱い陽射しが辺りを包んだ。
『マロンはさ、人の優しさを知ってる?』
『・・・どうだろ。普段からそんなこと思わないからわからないけど』
カイトがフッと笑った。
『たとえばさ、いつもの風景の中にいつも通りの家族がいるよね。でも、マロンにとっては、いつもは当たり前のものなんでしょ?いつもその光景を眺め続けているわけだろうし、どれがどの優しさなのかがわからないでいるんじゃないのかな。でもね、そのいつもの行動こそが、マロンに対しての優しさなのかもしれないよね』
アタシは、その意味を少しの戸惑いと共に考えてみた。


