『何?』
カイトが不思議そうにアタシを見ている。
『ないな、と思って。好きなもの』
納得したように、カイトがすかさず笑った。
『好きなものかぁ。いろいろありそうだけどね。たとえば、毎日見ているものとかさ』
少し考えてみる。
毎日見ているもの。
部屋にあるものばかり。
ドアや置物、家具、窓・・・。
『そっか。空が好きかも』
ひらめいたようにそう言うと、カイトは空を眺め見た。
『空かぁ。いつも舞い慣れてるから意識もしてなかったけど・・・。確かに、マロンちゃんには大空っていうものが憧れにもなるのかなぁ』
下を見下ろすと、いろんな人間がアタシたちには到底気付くはずもなく、通りゆく様が見えた。
みんな、一様に上を気にすることもないようだった。
『カイトは、何でいつも空を飛んでるの?』


