オレンジがかった空には、綿菓子のような雲がきれいな形を作って浮かんでいるだけだった。
沈みかけた太陽は、どこにも見当たらなかった。
もうすぐ、夜というものがやってくる。
ボクは、夜というものが嫌いだった。
真っ暗な空を見ると、なぜか悲しい気持ちになってしまう。
詩織さんは、いつもボクを抱き抱えては一緒に夜空を眺め見る。
゛あの月はいつ満月になるんだろうね゛
それを聞くと、ボクはなぜか気分がワクワクした。
月というものは、なぜこんなにいつも違う形でいるのかな?
ボクの疑問に、詩織さんは答えるまでもなくこう言った。
゛満月は満月でいいんだけど、一番落ち着くのはやっぱり三日月かな?゛
いろんな形があるんだね。
ボクの意見がわかったのか、詩織さんはボクの頭を撫でながら歌を歌い始める。
いつものことだった。


