愛は要らない



「あの人は・・・」

「見合い相手だよ」


遥の言葉に、綾野は驚いた顔で専務室の扉を見つめる


「なんで・・・」

「見合いする前から、彼女とは面識があったんだよ。・・・重い感じの子だったでしょ?」


遥は笑いながら、黒革のソファーに座り込む


「悪い子には見えませんでしたけど・・・」

「悪くはないよ。ただ、重いんだよ」


笑っているが、瞳が本気だということを語っている


「で、珍しいね。君が自分から僕の元に来るなんて」