【ケント】



俺は陽が嫌いだ。



チャラチャラしてて、本当の顔が見えない。



誰にでも懐き、悩みなんかなさそうな顔して、最悪、引きこもる。



俺はそんな陽が嫌いだ。



「また引きこもってんのかよ…」

「理由はだいたいわかるけど」

「陽の家のことか。複雑だからな」

「まさか出て行くなんてことに…」

「それは陽が決めること。俺は何も言わない」



よっさんはそう言ったけど、いちばん陽を気にかけてる。



いつでも食えるように、ペットボトルのお茶と、パンを部屋の前に置いた。



「大丈夫スかね?」

「知るか」

「何日引きこもるんだろ…」



この家で、いちばん仲がいい悠大が心配そうに部屋を見つめていた。



みんなに迷惑かけて、毎回同じことやって。



さっさと出て行け。



陽なんて、いなくたっていい。



その日、悠大と学校に向かったのは初めてだった。



俺はバス停まで。



悠大はそのまま歩いて学校。