【完】最期の嘘

礼治の掌は、不思議と汐の心を和ませる。



優太の大きな掌は汐をキュンとときめかせ、息が苦しいくらい捕まえる。



しかし、礼治の掌は汐を優しく包み、汐を緩やかに見守るようである。



「しー、ユータのいない間、寂しくなったら、俺に連絡して。恋ばななら、いつでも相手する。」



言葉ではそんなことを言った礼治だったが、本心は違った。



優太から汐を奪うのは無理でも、汐を想うことは自由。だから、少しでも、友達でもいいから、傍にいたい。



そんな気持ちから、礼治は汐に言い出したのだ。



そんな礼治の気持ちも知らずに、汐は礼治の親切心だと思い、嬉しそうに頷いた。