【完】最期の嘘

「あの、ここじゃ寒いだろうし中へどうぞ。」



汐は玄関の靴を端っこに退かし、礼治を部屋に招き入れる。



礼治は掃いていた踝丈のチェックの靴を脱ぎ、中のソファーへ腰を下ろした。



「コーヒーとココア、どっちがいいですか?」



「んー、ココア。」



甘い物に目のない礼治が即答するのが可愛くて、汐は小さく笑ってしまう。



汐は準備したホットココアのカップをソファーの目の前のガラスのテーブルへ置いた。



「いただきます。」



礼治はココアの香りをすうっと吸い込み、薄い唇に温かいそれを含んだ。