【完】最期の嘘

汐の震える小さな頭を見た優太は自分の中で何かが弾けるのが分かった。



『時間とか立場とか、関係ない。俺が気に入った。それだけでしょ?』



脳裏には、礼治の焼肉屋での真っ直ぐな言葉が過ぎる。



そうだ。関係あるもんか。



優太は自分の大きな掌で汐の頬を包むと、無理矢理自分の方に向かせる。



「優太さ…ん!」



泣いて濡れそぼったその汐の顔に自分の顔を寄せ、優太は啄むように口づけをした。



しょっぱい汐の涙の味がする唇。



その唇に、悲しみじゃなく、甘い魔法をかけるように、優しく、激しいキスの雨を優太は降らせた。