【完】最期の嘘

ドアの内側では、汐が優太を招き入れるのを躊躇っていた。



…やだな、きっとあの少しの会話で、泣いてるのに気付いたんだろうな。



腫れぼったい瞼を擦り、頬に残る涙の後を拭い取りながら汐はチェーンと内鍵に手をかける。



そっとドアを開くと、ほんの数時間前にステージで輝いていた一人が立っていた。



優太は汐の顔を数秒間見つめ、大きなごつごつの掌で汐の頬に触れ、紙を掬い上げる。



そのスローモーションで行われた動きに、汐の心臓がドクン、と強く波打った。