【完】最期の嘘

しかし男は汐に危害を加える動きはなく、終始玄関の方を気にしている。



…何、この人。



汐はそんな男の背中をじっと見つめながら首を傾げた。



「優太ぁぁ!出て来いー!今から行けばまだ間に合うぞ!」



玄関の外から数人の足音と誰かを捜す声。



「ヤダよ〜だ。俺があのカメラマン苦手なの知ってるだろ?」



汐の家に上がり込んだ男はべえっと舌を出して呟いた。



どうやら、この男は追われているらしいと汐は確信する。



しばらく捜していた足音が再び遠ざかると、男がホッと肩を撫で下ろした。