【完】最期の嘘

突然のこの現状に、汐は驚き過ぎて声も上げられない。



「ユータに頼まれた。代わりに送ってって。」



「あ…あの!大丈夫です!」



今のこの体勢だけはなんとかしたいと思い、汐は礼治の細長い体からすり抜ける。



「あれ、俺、嫌われてる?」



「そそそ…!そんなことないですよ!?恥ずかしかっただけでっ!」



慌てて否定する汐に、やわやわっと頬を緩める礼治。



「ホントだ。可愛いね。んー、汐だから、しーだね。」



どこまでも自分の世界の礼治について行けず、しばらく考えて『しー』が自分のあだ名であることに、汐はようやく気付いたのだった。