大学のキャンパス内にて 汐は、携帯電話をにぎりしめて、それが鳴るのを待っていた。 「汐ー?また彼からの連絡待ってるの?」 大学での友人である紗耶香に尋ねられ、汐は不自然に作った笑顔を向ける。 汐の恋人は、高校時代からの付き合いで別々の大学に通っている。 汐は東京。彼は地元。つまり、遠距離恋愛なのだ。 離れた当初は毎日何十通と交わされたメールも、今はほとんどない。 このまま自然消滅してしまうことを、汐は半ば覚悟してはいるものの、やはり諦めきれないでいた。