【完】最期の嘘

その日の夜、汐は眠れなくて、携帯電話を強く握りしめた。



思い出す、端正な顔立ちと艶やかな黒髪に空色のメッシュ。



トクン、トクンと心臓がポンプ運動をするのがやけに五月蝿い。



「やだな…私ったら。彼氏もいるのに。」



呟いて言い聞かせるが、心臓の動きは加速するのみ。



これはきっと、芸能人なんて初めて見たうえ、仲良くなったからだ。



脳裏に焼き付いた優太の笑顔を、必死に掻き消すように汐は瞼を閉じた。