4月某日。東京ドーム。 そこには、シュガビを一目見ようと集まった十万人ものオーディエンス達がいた。 その列の中には…一人で不安な顔をした汐の姿。 汐の席は『B-12』である。 十分三人の姿を見れる良い席なのだが、それが逆に汐を緊張の渦に包んでいた。 優太を直に見るのは、約四ヶ月ぶりである。 優太は自分を覚えていてくれていないのかもしれない。 本当に一夜限りの関係だったのかもしれない。 それでも、想い続けようと決めた汐は、手汗で湿る左手の掌をジーパンで拭いた。