「もう、いいのか?」
傘の中に入って来る礼治に、ハイジはぶっきらぼうに問い掛ける。
「うん、もう、いいの。」
礼治はいつもみたいに柔らかな無表情で頷くと、ハイジを促し歩き始める。
「ね、俺、上手く嘘、つけてたかな…?」
礼治がぽつりと呟く。それがどんな嘘だったのかはハイジには分からないが、礼治の顔を見て言った。
「お前ほど嘘をつくのが下手くそな奴ぁいねーのに、頑張ったんじゃね?」
「ふふ、ありがと。…ハイジ、俺の哀しい恋“哀”は、もう終わりだよね?」
抑揚のない声の礼治。けれどその声は決して暗いものではなかったように、ハイジは思えた。



