【完】最期の嘘

再び、濁りのない礼治の瞳が汐を捕らえる。



「しー、ユータのこと、好き？好きなら素直になって。もう、自分の気持ちに嘘をつくのは最期にして。」



だって、俺が見たいのは、しーの笑顔なんだから…。



最後に思ったことは口には出さなかった礼治だが、その気持ちを込めて汐に笑いかける。



「…でも。」



「でも、は、めっ！俺のことは大丈夫だから。もう、しーがいなくても、ね？」



礼治は持っていた傘を汐に無理矢理持たせ、走ってハイジの元に向かった。



…自分の気持ちに嘘をつくのは最期に、か。



汐は礼治から受け取った傘を握り礼治の言葉を心の中で復唱した。