【完】最期の嘘

「俺は、彼女より仕事を選んだんだよ。汐ちゃんを、突き放した。」



本当は汐を沢山の辛い目から守るためのことだったが、その気持ちは隠す。



自分が酷い男であればそうであるほど、礼治も汐に近付ける。



「何ソレ…しーを、傷付けたんじゃないよね？」



「傷付け、た、よ。俺は、自分の仕事のために、彼女を切り捨てたんだから。」



優太は礼治の真っ直ぐな目線に射ぬかれぬよう、目線を自分のコーヒーに向けた。



コーヒーの黒は、何故だか霞んで見えた。