【完】最期の嘘

一人ぽつんと冷たいその場に取り残された汐。



頭に残る残像は、玄関から出て行った男らしい大きな背中。



ぽろり、ぽろりと涙が頬を伝ってはフローリングを濡らす。



優太さんが私を抱いたのは…その場の勢いだったの?



汐はただ泣いた。冷えた心を涙で温めるように。小さな子供が泣くように叫んで。



……ドアの先、フローリングよりももっと冷たい廊下で、優太が座り込んでいるとも知らずに。



「ゴメン汐ちゃん。…俺、こうすることしでしか、君を愛せないんだ。」



どうせなら、嫌な男を演じようと苦しみ、そしてもがいた優太。



汐の泣き声が聞こえなくなるまでずっと、ずっとそこに座り込んでいた。