教室の窓から見える下駄箱の横の桜の木。

『ねえ、桜の木、君はユキの居場所知ってる?』

桜の木は、大きく揺れて花びらを舞い上げた。

僕は抜け殻のようだった。

今まであんなにキラキラしていた世界が、モノクロになった。

目の前の景色はただ目に入るだけで、それが何なのか脳まで伝達しない。


ねえ、ユキ。

君は今どこでどうしてる?


元気でいるの?


僕は無表情でただ時間を過ごしていた。

名前を呼ばれても、返事をするのに時間がかかる。

笑いかけられても、笑顔を作るのに苦労する。

暑いのか寒いのか、楽しいのか苦しいのか・・・よくわからない。