私が学校への道を急ごうとしたとき、そんな声が聞こえる。その声の主のことは知っていた。だが、まさかという気持ちが強かった。振り返ると、昨日見た彼の姿があった。


「宮野君」


「おはよう。そちらの方は?」


「私の友達で、永坂あいさんです」


 あいは頭を下げていた。


「そっか。偶然見かけたから。じゃあまたね」


 彼はそういうと、私に背を向ける。その先には彼の友達なのか背の高い男の人の姿があった。

「うわー。本当に宮野君と知り合いになったんだ」


 昨日からその話をしていたが、彼と口をきいたことで、それが実感となって現れたんだろう。さっきとは打って変わってテンションが高くなっていた。


「またねってことは近いうちにまた会えるってことじゃないの?」


「そんなことないよ。だって私は携帯の番号も知らないし、友達でもないんだから」


 辺りを見渡して、同じ学校の子がいなかったことにほっとする。


 私たちは学校へ急ぐことにした。


 そのときの私に対する彼のイメージはやっぱりイメージどおりの人だったんだということだった。