『短編:ついでのメリークリスマス』


きっと前々から、こっそりケーキを作る練習をしてたはずだよね。

指輪だってお金をためてなきゃ買えないだろうし。


「今日が私の誕生日だっていうのは、誰から聞いたの?」


きっと女友達の誰かから聞きつけたんだろうけど。


なんて思っていると。


「聖香からだよ。

初めて自己紹介したとき、聖香なんて凄い名前だねって言ったら、

クリスマスに産まれたからだって言ってたじゃん。

いっつもクリスマスついでに祝われちゃうんだ、って愚痴ってただろ?」


「え、そうだっけ?」


本人も忘れてた内容を突きつけられて、若干戸惑い気味な私。


「そうだよ。俺そん時、聖香って純情なんだなぁ、って思ったんだもん」


純情だなんて言われて、強烈に恥ずかしさがこみ上げてきた。

今日は人和にさんざん泣かされたから、化粧もすっかり剥げ落ちて、

きっとものすごく不細工な顔になってるに違いない。


人和の中にある見たこともない引き出しを開けすぎて、

私の胸のどきどきキャパは、破裂寸前だ。