人ごみを並んで歩いていると、反対側から来たおじさんとすれ違いざまに肩がぶつかってしまった。


「あ、すいません!」


相手よりも先に、人和が非を認める。


「気をつけろよ。ちゃんと前見て歩け!」


ぶつかったのはお互い様なのに、人和はおじさんにぺこぺこと頭を下げた。



・・ばか。



私は人和を無視してさっさと一人で歩き始めた。

あんなのが彼氏なんて、かっこ悪すぎ。


「おい聖香(せいか)、待ってくれよ!」


人和の声が背中越しに聞こえてきた。

振り向かなくてもわかる。

お座りをして待てを命令された犬みたいな顔してるんだ。



・・ださすぎ。



私、なんでこんなのと付き合ってんだろ。