紅芳記


「そなたに、子はおるか?」

子…。

殿の、子は。

「いえ、おりませぬ。」

「そうか…。」

「それが、何か?」

「私にも子がおらぬ。」

「はい。」

「しかし、淀殿が産んでくれたのじゃ。
豊臣の唯一の世継ぎをの。」

淀殿…。

淀の御方様は織田の血を引く姫君で、太閤様の御側室です。

…側室が、世継ぎを産む。

その時の北政所様は、さぞお辛かったのではないでしょうか。

世継ぎが産まれた安堵と、女としての嫉妬。

その板挟みにあったことでしょう。