片桐さんは無表情で黙ると別人に見える。 黒髪は固めてなくて、風で素直になびいていた。 あなたをこんな風に困らせている私は、 あなたの目にどうやって映っているんだろう。 「……行こうか。」 彼は裾をつかんでいる私の手を取ると、そのままアパートに向って歩き出した。 分からない。 分からないよ。 どうしてそんなに優しくするの? どうしてそんなに切なく笑うの?