「………ん?」 「え、どうしたの」 今度は高瀬くんがわたしの顔をマジマジと見てくる。 何か付いてたかな? 「唇のところ、切れてるよね? 大丈夫?」 「…っ、いや、これは…」 “元彼とキスして切れた”なんて言えるわけがない。 わたしは高瀬くんから目線を逸らす。 「乾燥しちゃって…」 「………そうなんだ」 高瀬くんは一瞬不思議そうな顔をしたけど、すぐに笑顔に戻った。 「うん…だから気にしないで」 『何を気にしないの』 背後で声がする。