彼女は悩んでいたが、ふと何か気付いたように、こちらを見た。

「そういえば、ここ、医務室みたいですが、お医者さんとかいらっしゃるんですか?」

他に誰も居ない方が良いんですが、突然誰か来られたりとか…。

もっともな事を訪ねる彼女。
だが、その心配は無用だ。

「ああ、今のところ俺が医者代わりをしてるから。」

簡単に彼女に答えた。

元々は俺の家系はそっち方面で有能だったらしいのだが、オヤジが突然今の家業を始め、俺に継がせて今に至る…という経緯。

俺は籠もって何か研究するタイプではなく、実践的な方が好みだから好都合だったわけだが。

「へーそうだったんですか…」
道理で誰も居ないと思った…。簡単に答えたにも関わらず、彼女は納得顔になった。

あまり物事を突っ込んで考えるタイプでは無さそうだ。

「あと…何か凄く良くしてもらって…有難うございます!」

ガバッと突然頭を下げられた。

俺が接した事のある女性は、男が女に尽くすのが当然と考えているようなのが大概だった。

それ故に、俺は彼女の言葉に、酷く驚き、新鮮な印象をうけた。

「い、いや…そんな改まって礼を言われる程でも…」

戸惑いながら俺は答えた。