「そんなに放して欲しいんだ?」

「勿論です!」

俺は、彼女の果物のように瑞々しい唇を撫でる。

「名前は知らなくても、別にイイコトはできるよな」

「い、イイコトって…」

可笑しい程に動揺する彼女。

俺の指先で、震える唇と彼女の吐息。

「大丈夫、優しくするし。心配しなくて良いよ」

プチッ…。

(ん?なんの音だ?)

「歯ぁ、食いしばれ。」

ドスの効いた声が聞こえたのを最後に、俺の意識は途切れた。

俺の名誉の為に言っておくと。
海賊のキャプテンのこの俺が、不覚を取ったのは、これが初めての事…だった。

同時に俺は、世の中には加減というものが大変重要で有ることを悟った。