高校生のとき、ほんとうに好きで、大好きで、どうしようもないひとがいた。 「綾香」 そう呼ぶ、彼の声がすごく好きだった。 くしゃくしゃになる、あの笑顔が大好きだった。 何も話さなくても、ただぼぅとしているだけでも、居心地のいい彼の隣が好きだった。 自転車をふたり乗りしたときにしがみついていた、あの背中が大好きだった。 大事な、大事な恋だった。 .