昨夜の友人からの電話は嘘だったと、卓也は思おうとした。 あれから、あの電話のあとから、卓也は一睡もできなかった。 ただひとりの名前が、頭から離れてくれない。 あの頃、卓也の隣に当たり前のようにいつもあった笑顔を、記憶の中から呼び起こす。 それは、至極簡単なことだった。 この十年、一度たりとも想い出さなかったことはないからだ。 .