──十年、か。 永かったようで、振り返るとあっと言う間だった。 目の前に建ちはだかる、灰色の大きな建物を眺めると、何とも言えない思いに駆られる。 この場所から離れて、十年。 ──私はまだ、どこにも辿り着けていない。 .