──怖かった。 今なら、素直に認められる。 あの頃の卓也は、彼女が自分から離れていってしまう気がして、怖かった。 進学先が、地元から遠く離れた東京だということも。 それを自分が知らなかったことも。 東京に行く理由を、彼女が話してくれないことも。 ──彼女が俺から離れていくくらいなら、俺から彼女を突き放せばいい。 .