二の句が告げないとはこういう事を言うのだと、ニュクスは実感した。
言いたいことは山のようにあるはずなのに、そのどれもが言葉を成してこなかった。
その時、一人の壮年の男が、若い男を伴ってロカに挨拶にやってきた。
「ユピテロカ様。
本日は真におめでとうございます。このような美しい姫君を妃にお迎えになるとは」
「ああ、ええと、お前は」
長くなりそうな男の話をさえぎって、ロカは男の名前を問うた。
「はい。カークスと申します。父王にお仕えしているものでして、
今日は息子をご挨拶に連れてまいりました。アニウスと申します。
ロカ様と年も近いことですし、何かあればお役に立つこともあろうかと思いまして。
これアニウス、挨拶を」
「アニウスと申します」
それは先ほど、ニュクスを無遠慮に眺めていた若い男だった。
カークスとアニウスは、親子でロカの前に深々と頭を下げた。
・・アニウス、ね。
眼前で頭を下げているものの、そこから感じるアニウスの何かが、ニュクスを身震いさせた--。


