【天の雷・地の咆哮】




・・なるほど、だから死のうとしたのか。



ロカは、うっすらと彼女が死のうとした理由が見えてきたような気がした。


死ねば彼女の腹の子の父親について、あれこれ詮索されずにすむ。

子どもだけを殺すこともできず、かといって産む事もできず。


そうして死ぬ事を決意したのだろうと思った。

自分のためではなく、ホーエンの心と名誉を守るために。


話の最後に名前を聞くと、愛らしい唇が、ヴェローナです、と答えた。



   ***



俺は、そんな愛を知らない。

俺は、そんな愛し方など知らない。


小さな肩を震わせて、命を懸けて必死に一つの愛を守ろうとしている少女。


だから。


だから、彼女の大事なものを守ってやろうと思った。