【天の雷・地の咆哮】


“さきほどの話”というのが、

少女が乱暴されて子どもを孕んだこと、

その子どもを実の親から流すよう言われていること、

であることを、もちろんロカは理解した。


井戸から身を投げられて、こっちも巻き添えで死ぬところだった。

だから、死のうとした理由を聞く権利がある。


半分脅しとも取れる言葉で、ロカは少女から真実を聞き出した。


『私の話は、すべて作り話でございます。

どうか、罪を犯した私を罰してください』


そんなにも少女が必死になる理由が、ロカには理解できなかった。

神殿に侵入し、神官に乱暴をはたらくものなど、

自分が捕らえて罰してやろうというのに、なぜ庇おうとするのか。


『どうして庇うんだ?』


ロカの問いに、少女はぽつりと呟いた。


『傷ついた彼を、これ以上苦しめたくはないからです』