それからさらに月日は流れ、数年を経たある日。
ウェスタの隣国、チェルシーから東へ船で半日ほどの海上に漂う船の甲板に、
ひげを生やした薄汚い男が、立っていた。
金色の髪の毛は、長い航海で、潮風と日光にさらされ、
ひどく痛んで縮れており、砂と土にまみれて、薄汚れている。
誰がこのこ汚い男を、かつてウェスタの王であった人間だと思うだろうか。
『ウェスタの前の王様のあだ名は、“狂王”ってんだ。
今の王様は“暴君”だし、ろくな国じゃねぇぞ』
ウェスタの噂話を耳にしたロカは、口の端を吊り上げてにやりと笑うと、
自分の瞳と同じ色の空を見上げて、額の汗を拭った。
船に残れという忠告を無視し、ロカはウェスタを目指す。
・・皆、元気か?


