ロカはいったんニュクスから視線をはずすと、天井に目を向ける。
数拍の沈黙のあと、
「ん~?理由が必要か?」
真顔で、答えた。
とぼけているのか、本気で思っているのか、まるでわからない。
ただ、いつもとは違い、唇に笑みをはいてはいなかった。
「当たり前でしょう!」
興奮したニュクスの金切り声に、ロカは眉をよせる。
「そうだな。じゅあ、世界を見たいからってのはどうだ?」
いかにも適当な答えに、ニュクスは声も出ず、
ロカを上目遣いに睨みつけ、小刻みに震えだした。
「私を、馬鹿にしてらっしゃるの?」
理由を聞いたところで、ロカが城を離れることに納得がいくわけがない。
けれど、理由さえ語らず出て行くのでは、なおさら承服できないに決まっているではないか。


