ロカの胸の中で瞳を閉じ、甘い雰囲気に酔いしれていたニュクスは、
愛の変わりに落とされた別れの言葉が、すぐには理解できない。
「なんのこと?視察にでも行かれるの?」
「いいや、言葉どおりだ。城を、出る」
間近で見たロカの蒼い瞳は、何の感情もうつさない。
ただ、黙って自分を見下ろすばかり。
ニュクスの心臓が、嫌な音をたててねじりあがる。
「いつ、帰ってくるのです?」
「わからん。1年後か、10年後か。あるいは一生戻ってこないか」
聞かずとも、答えはわかっているような気がした。
それでもやはり、黙ったまま行かせることはできなかった。
「なんのために?」
ナンノタメニ?
何のために、自分たちを捨てようというのか。


