あとでな、という言葉どおり、夜も更けた頃ロカはニュクスの部屋に姿を見せた。
城の内外では、一晩中飲み明かすつもりの人々の騒ぐ声が、どこからともなく耳に入る。
ニュクスは娘の様子を見るためという理由で、早々に宴の席を辞去していた。
現れたロカを部屋へ迎え入れると、指示もなく侍女たちが姿を消す。
王がこんな時刻に妃の部屋を訪れた理由を良く分かっているらしい。
ロカは無言のままニュクスとの距離を縮めると、彼女の細い腰に手を回し、
自分の胸に力強く包み込んだ。
悪い気はしなかった。
ニュクスは今でも変わらずこの夫を愛していたし、
彼女の求めるものとのずれがあるとはいえ、ロカから与えられる愛に満足していた。
しかし次の瞬間、ロカの口から発せられた言葉により、
ニュクスの心臓は剣で串刺しにされたような衝撃を受けた。
「悪いな。ニュクス。
俺は、今夜、この城を出る」


