唇が、一言一言正確に発するように大げさに動く。 遠くで聞こえないから、多分音は発してないのだろう。 ニュクスは何か重要な事を自分に伝えようとしているのかと思い、 真剣にその唇を見詰めた。 『あ・と・で・な』 ・・はぁ!? あとで、部屋に行くということなのだろうか。 ロカは、意味深ににやりと笑うと、ニュクスに向かって片目をつぶって見せた。 ・・はぁ。 緊張が、一瞬で弛緩する。 優雅という言葉とは縁遠い人だと思いながら、ニュクスはため息混じりに頬杖をついた。