「このたびは、神官長様のご就任、真におめでとうございます。
これで、ユピテロカ王を中心に、ウェスタはますます繁栄を遂げるでしょう」
アニウスからも型どおりの挨拶を受けたロカは、そうだな、と酒をあおる。
そのまま立ち去りかけたアニウスに、そういえば、とロカがさりげなく口にした。
「お前の父が死去したそうだな。
まだ若いのに、惜しい事をしたな。家のほうは大丈夫なのか?」
「ご心配をおかけして、申し訳ございません。
一族で力をあわせ、父の分まで王のお力になれるよう努力いたします」
病死と偽り、内密に葬儀を終えていたアニウスは、ロカの前に深く頭を下げた。
「そうか。よろしく頼む」
自分から話を振ったわりには、たいして興味も無さそうに、ロカは杯を手に取る。
アニウスが頭を上げたところで、ロカは彼の耳元に杯ごと顔を寄せると、
その縁に口をつけながら、周囲に聞こえぬほど低く囁いた。
「なぜ斬った?」
アニウスの耳から、一瞬で喧騒が遠のいた。


