新しい神官長が誕生したのは、それから間もなくのことであった。
ウルウというその神官長は、卓越した記憶力の持ち主で、
ウェスタ神殿の誰からも人望の厚い女性だった。
ルクスの養女であるウルウを神官長におしたのは、狂王と噂されるユピテロカ王。
反対するかに思われたアニウスは、特に異論を挟むこともなく、
新しい神官長は、ウェスタ国中の人間に知られることとなった。
ウルウの就任の儀式が華やかに行われた日。
城の中では、大勢の貴族たちが集まって酒を酌み交わしていた。
その中央に陣取るのは、もちろんロカであり、
赤ら顔の男たちが、次々に祝いを述べて酒を注ぐのを、上機嫌で受けている。
狂王の名に“恥じぬ”奔放な態度を見せ、
心無いものには期待を、心あるものには絶望を感じさせていた。
ニュクスやヴェローナ、そしてマルスも出席を許され、
ロカからやや離れたところに座っていた。


