だから、本当はロカの奇妙な噂を耳にしているのかもしれないと思いながらも、
ニュクスはその先を続けた。
「それも、巨大な船を作って、民のために何かするという理由ではなく、
たんに『世界の果てがどうなっているのか調べたい』とかいう自分本位な理由でだそうよ。
一体、ロカは何を考えているのかしら」
大丈夫ですわ、と、眉間に皺を寄せるニュクスとは正反対に、
ヴェローナは落ち着いた声で笑ってみせる。
「ロカ様は、凡人にはわからない才能をお持ちになっていらっしゃいます。
きっと他の人とは違う視点で、もっと広い世界を見つめておいでなのでしょう。
それにあの方は繊細でとてもお優しいから、
民のためにならないことをしたりはなさいませんもの」
すみません、ニュクス様が凡人というつもりではないのです、
自分の失言に気づき慌てて言葉を付け足すヴェローナの姿を見て、
ニュクスは思わず肩の力が抜ける。


