【天の雷・地の咆哮】


「マルス。そちらの部屋で、ディスコルディア様と一緒に遊んでいなさい」


ヴェローナは、父が怪我をするまでの事の顛末を話し終えた息子に、義妹の面倒を見るよう指示すると、

マルスは、はい、と歳の割りにしっかりと返事を返した。


「よろしくお願いしますね。マルス様」


ディスコルディアの母であるニュクスに柔らかく微笑まれて、

マルスは少し照れ笑いすると、義妹の手を引き、数人の侍女と一緒に部屋を下がった。

お兄たま、というディスコルディアの弾む声に、ニュクスはわずかに微笑んだ。


「申し訳ありません。マルスが止めていれば、こんなことには・・・」


子どもたちが去ってすぐ、二人きりになった部屋で、

ヴェローナはニュクスに深く頭を下げた。


しかし、ニュクスの怒りはおさまらない。当然だろう。

怒りの矛先は、マルスでもヴェローナに向けられているのでもなく。


「何を言ってるの!悪いのは全てロカ、王だわ。

一体何を考えて、そんな愚かな事をしたのかしら。

王であるという自覚に欠けるとは思っていたけれど、これほどなんて!」