「父上」
もしや悪い病にでもかかったのではないかと息子を案じたカークスは、
すっくと立ち上がり、力強く太い声を出すアニウスの様子に、
取り越し苦労だったかと、胸をなでおろした。
「なんだ」
「父上も、もうお年です。二度と城へはあがらず、隠居してください。
私が跡を継ぎますので、家のことはご心配なく」
「な、何を言っている?」
「王は全てご存知です。あなたがニュクス妃にしたことも。
父上は、父上のお嫌いなルクス様が権力を持つのを嫌って、ニュクス様を襲わせたのでしたよね?
確かに、ルクス様の養女であるウルウ様は、有能な神官ですし、
姪のニュクス様までが妃になれば、その権力は揺るぎがたいものになるでしょうが」
ふぅ~とため息をつきながら、アニウスは首を横に振った。
「しかし、ユピテロカ王の力量を見誤ったのが運のつきです。
命まで差し出せとは言いません。
どうぞ、余生を穏やかにお過ごしください」


