・・狂人などではない!!
アニウスは、能力のない王子であろうと高をくくっていた自分を恥じた。
間違いない。
ロカは知っているのだ。
ニュクスを襲わせたのが、父の仕業である事を--。
繰り返し自分の名を呼ぶ声で、アニウスははっと我に返った。
「どうしたのだ、アニウス。具合が悪いなら神官を呼んで薬草を煎じて貰うか?」
心配そうに自分を見つめるカークスの姿が、ひどくこっけいに見えて、
アニウスは唇に薄い笑みを佩いた。
息子の自分でさえ、酔った勢いで父が襲撃の失敗を漏らしたのでければ、
気づいてはいなかっただろう真実。
それをあっさり見抜いている者ががいるなどと、誰が想像できようか。


