真偽のほどは定かではないが、質問の答えは用意されていたのだろう。
眉一つ動かさず、ロカはすらすらと返答した。
『仕方ない。ヴェローナが気に入ったからな。
家には帰さず、こちらで還俗させる』
非常識な内容を簡単に口にするロカに、アニウスは頭をひねった。
やはり、狂人の噂が真実か。
『王子自らが、還俗させるとおっしゃるのですか?
失礼ながら、そんな前例はございません。
まずは、私が父に話し、家に連れ帰って還俗を』
『もう決めたことだ。意見を求めているのではない。
報告をしているだけだ』
たった今、狂人と判断したばかりなのに、
アニウスはロカの覇気に気圧され、語気を弱めた。
『なぜ、父でなく、私に?』
『なんとなく、お前に言っておいて方がいいと思っただけだ。
なんせ義理の兄になるのだからな』


