ロカが王となってから、瞬く間に数ヶ月が過ぎ去ったある日。
ヴェローナの実家では、彼女の父であるカークスの部屋に、
兄であるアニウスが、いつになく真剣な表情で訪れていた。
「おお、アニウスか。
お前も一緒にマルス様のところへ行けばよかったのに。
日に日に立派におなりだぞ。
わしの孫が次代の王となられるまで、長生きをせんといかんな」
上機嫌で顔をほころばすカークスとは逆に、アニウスの眉間のしわが深くなる。
「父上。またヴェローナ、いやヴェローナ様のもとへ行っておいでだったのですね。
頻繁にうかがうのはまずいと、あれほど申し上げたのに」
「何を言っている!
マルス王子のご機嫌伺いは重要な仕事だ。
周囲にも、マルス様こそが跡継ぎであることをしらしめなくてはならん。
幸いまだニュクス妃には子どもがいないが、いつ向こうに子どもができるかもしれんのだぞ」
・・だからこそ、まずいのだろうが!
しゃがれ声を発するカークスを目の前にして、アニウスは歯ぎしりをした。


